第184章 万全を期す

一条星夜はエレベーターの中に立ち、振り返ることもなく立ち去る彼女の背中を見つめていた。

扉がゆっくりと閉ざされ、その姿が完全に視界から消えると、彼は誰にも聞こえないほど微かな溜息を漏らす。

エレベーターは再び上昇を始める。彼自身と、未だ報われぬ期待を乗せて。

橘凛がプロメテウス研究室に足を踏み入れると、そこは異様なほどの熱気と興奮に包まれていた。総責任者の高橋博士は彼女の姿を認めるなり、紅潮した顔で駆け寄ってくる。その手は、興奮のあまり橘凛の腕を強く掴んでいた。

「橘凛! いいところに来た! 新型エネルギー伝導素材の研究で、ついにブレイクスルーが起きたんだ! この発見を現在開発中の最...

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